2017年秋アニメ所感

あけましておめでとうございます。皆さまいかがお過ごしでしょうか。

さて、2017年秋アニメは粒ぞろいで大豊作なクールでしたね。

という訳で前置きはこんなもんにしてさっそく紹介に移りましょう。

最終話まで観た作品についてしか語りませんがご了承ください。

 

魔法使いの嫁 (WIT STUDIO)

ヤマザキコレ原作の本格ファンタジー作品。今期オススメしたい作品のひとつ。

妖精や悪霊の類が見えてしまう特異体質の少女智世が、不気味な容貌の魔法使いエインズワースに弟子として引き取られ、様々な人やものと出会うというストーリー。

シンプルに出来が極上で、ストーリー、作画、演出などどれをとっても素晴らしい作品。さすがはWIT STUDIOといったところ。物語のテンポ感が非常によく、飽きさせない上に上質な演出も相まって30分が一瞬で持っていかれる。

レイアウトや色彩も大変良く、丁寧に時間と人員をかけて作られているんだなというのが解る。赤や緑、青といった原色の使い方が非常に上手く、シーンや人に合った色合いが華やかに映る。

とにかく全てが100点満点の作品でした。1月から2期も始まる為、まだ観てない人は年末年始の時間のある時に予習しておくと良い思いが出来ると思います。

 

宝石の国 (オレンジ)

市川春子原作のファンタジーフル3DCG作品。今期覇権候補のひとつ。

人型の宝石たちが暮らす世界で、主人公フォスフォフィライトが他の宝石たちとの関係や襲来する月人との闘いの中で成長し、変わっていくというお話。

最近作品数を増やすフル3DCGアニメの中でも異質で、特に質の高い作品。レイアウト構成が非常に巧く、ダイナミックなアクションもさることながら、動きの少ないシーンであっても視点やキャラクターの立ち位置などから拘りを感じる。強力な演出力も相まって爆発的な良さを創出している。ヤバいですよこれは。

また、登場人物間での感情のやり取りであったり主人公の変化などが手に取るようにわかる表情や動き、間合いの取り方などとにかく情報量が多くて情報に溺れたいオタクにもお勧め出来る。

シンプルに絵として見ているだけでも大変美しく楽しいので是非観てください。今期推せるアニメの中でも特に素晴らしい一作です。

あのねえ、最終話の辰砂ですよ。ええ。

 

つうかあ (SILVER LINK.)

つうかあは神。今期圧倒的覇権候補。(豊作すぎて覇権のひとつとしてしか扱えないのが悲しい)

作画などはもちろんの事ながらとーにかく脚本と物語の構成が素晴らしすぎて感動した。1話単位での完結性が極めて高く、物語の密度が均一でありながら上質で滑らかなムースのような仕上がり。良いですか。つうかあを観なさい。

レーシングニーラーというレーシングスポーツで今期優勝を目指す(完全に優勝してる)女子高生達の熱い絡みの話なんですが、何が素晴らしいってとにかく登場人物がコーチ以外全員百合カップルで、それぞれの異なる関係性を鬼のような濃密さで描いており大変つよい。レーシングニーラーはドライバーと荷重をかけるパッセンジャーとに役割を分けて2人で運転するレーシングスポーツなんですが、まずこの時点で濃密な百合が展開される事はわかるでしょ? 更に運転中は互いの事が見えないから各々の事を十全に理解している必要があると。完璧に理解出来たでしょ、百合なんだよ。

登場チームは7チーム。主人公の三宅女子高校側車部宮田ゆりと目黒めぐみは幼馴染で、初めはレーシングニーラーを運転するのが好きで、お互いのことが好きでやってきたのにイケメンコーチが来たことでいろいろあって険悪になり、そこから最終話まで他チームの百合プロブレムを解決したりしながら自分たちの関係についてなあなあにしてきた訳なんですが、最終2話で自分たちの問題に直面して最終レースに挑むというヤバいお話でもうね、これは観てくれとしか言いようがないんだよな。

つうかあを観てないオタクはフェイク。人生をやってない。良いか。つうかあを観ろ。

 

魔法陣グルグル (ProductionI.G)

衛藤ヒロユキ原作のギャグファンタジー作品。永世覇権。

魔法陣グルグルは1994年にもアニメ化されていたが、今回はこれをリメイク。大変素晴らしい出来で、永世覇権の称号を与えたい出来だった。つうかあ同様今期はあまりに豊作すぎて今期覇権とはっきり言えないのがつらい。覇権に値する作品なので是非観て欲しい。

作画、演出、脚本、美術、とにかく全てのレベルが大変高度な作品。可愛さに対する拘りがつよく、石上静香演ずるククリの可愛さが半端ではない。人間が到達できる可愛さの極致。作画は全編を通して安定しているが、ファンタジー冒険譚らしい巧いウソの吐き方も見所で、ダイナミックな動きやカメラワークが大変魅力的。

ギャグとシリアスのバランスが絶妙で、飽きの来ない怒涛の畳みかけが強すぎる。20話の「抜け出せ! レフ島」などたまにそのバランスを崩してくる回が挟まれることも飽きずに観られる要因になっている。

どの要素をとっても完璧な作品なので是非観てください。

 

血界戦線 & Beyond (ボンズ)

内藤泰弘原作の現代ファンタジー作品。1期に引き続きクオリティの高い作品。

異界と現世が交わる街ヘルサレムズロットで、神々の義眼を持つレオナルド・ウォッチが秘密結社ライブラのメンバーと共に様々な事件を解決しながら成長するというストーリー。

1期からメインスタッフがガラッと変わり若干雰囲気やテンポ感が変わったものの、クオリティの面では変わらずどの話もハイクオリティな仕上がりとなっている。どちらかといえば原作のテンポ感に近づいたように感じる。

今期はライブラメンバーそれぞれの生活を描きながらレオナルド・ウォッチの成長にも焦点が当てられており、1期でザックリと把握した登場人物の人物像を更に掘り下げる作りとなっている。最終話前4話あたりは特にレオナルド・ウォッチの成長譚としての演出力が高く見甲斐がありオススメ。

1期も含めて大変面白い作品なので是非観て頂きたい作品。作画などはもうボンズパワーなので言うまでもない。

 

ボールルームへようこそ (ProductionI.G)

竹内友原作のボールルームダンスを主題にしたスポーツ作品。作画のクオリティが高く是非観て欲しい作品のひとつ。

内気で自身の無かった主人公富士田多々良がボールルームダンスと出会い、他のダンサーたちとの関わりの中で自己表現や主張を覚えていくという物語。

今期は連続2クールの2クール目だったが、灰汁の無いスッキリとした仕上がりで観ていて気持ちが良かった。注目すべきは作画で、バンクも多いものの説得力のある表現が随所に見受けられ、I.Gの作画力の高さを再認識する作品。テンポ感は若干悪いが、それを補って余りある構成力とキャラクターの魅力で怒涛の30分を毎話届けてくれる。

多々良ペアの成長譚もさることながら、今期のライバルである釘宮さんの物語も多々良との良い対比となっており素晴らしい。最終話近辺で観られるダンスに真摯に取り組む者同士のアツい闘いは圧巻。最終話のカタルシスは今期でも一二を争う出来。

前今期共に非常に高いクオリティなので是非とも観て欲しい作品。

 

食戟のソーマ 餐ノ皿 (J.C.STAFF)

附田祐斗原作の料理バトル作品。今期覇権争いに食い込んだ安定した良作。

1期2期に続いて、主人公幸平創真が料理勝負をしまくるお話。

2期ではテンポ感や作画の乱れなどかなり不安になる要素が多かったが、3期は1期並みのクオリティと安定感で上位争いに食い込んできた。制作が追いついてなさそうな雰囲気はあったが、緩急の付け方が上手く見所や重要なシーンではバッチリ決めてくれた。信頼。

やはり演出が絶妙で、飽きが来ない上に胃もたれもしない仕上がり。上質。

2期の低迷が気になっていただけに復活が嬉しい一作。1期2期と観てきた人には是非とも観て欲しいが、2期の緩慢さもあり3期ともなると新規に勧めるには少しハードルが高い。興味のある人はどうぞ。

 

クジラの子らは砂上に歌う (J.C.STAFF)

梅田阿比原作のファンタジーアニメ。美術・作画共に極めて美しく、設定が良く作りこまれた世界観が十全に表現されている良作。これは完全な好みなんですが、脚本やお話そのものがあまり好きではないので評価を下げています。合う人には合う作品だと思う。

砂漠を放浪する砂クジラの上で平和に暮らしてきた人々が、とある事件を端緒として世界の在り方に触れながら、多くの人々の死と共にいろいろと変わっていくというストーリー。

先に述べた通り美術や作画のレベルが非常に高く、どのシーンをとっても一枚の絵として完成度がすごい。レイアウトの段階でよく練られているんだろうなというのが良く解る。エフェクト作画やパーティクルの表現なども美しく、アクション作画は物体の重心が手に取るようにわかる程のレベル。大変いい。

私の感覚で悪いんですが、登場人物に全く移入できなくて、こう、登場人物の感情にリアリティが全く感じられなかったのが結構厳しかったという部分はある。ネタバレになるので回避したい人はこの後を読まないようにして欲しいんですが、砂クジラの人間はフルセットの感情を持っていて、彼らを晒し物の罪人として砂の牢獄に閉じ込めた帝国の人間は感情を別の生き物に捧げていて砂クジラの人間を異質な罪人として認識しているという構造が「物語内の人間と視聴者側の人間」という構造の再現になっていてメタ的な二重構造を意図的に作ってるんだとしたらとても凄いと思うし、移入しづらい性質をキャラクターに乗せる技術は半端じゃないなと思うんだけどたぶんそうじゃないよね?(識者の意見を問う)

ともかく観るべき部分があったので最終話まで観たは観たけれど、個人的にはあまり好きになれなかった。それはそれとして美しいので次クールも観るし合う人は合うのでとりあえず皆さん3話辺りまで観てみると良いと思います。

 

少女終末旅行 (WHITE FOX)

つくみず大先生原作の終末ファンタジー。俺はつくみず信者なので語るべき口を持たない。

主人公のチトとユーリが文明の崩壊した未来都市を愛車ケッテンクラートに乗って旅行し続けるというお話。

原作の虚無感や空疎な感覚がずぼっと抜かれて美しさとかそういう要素が突っ込まれていて少しつらかったが、終盤(特に9話以降)は原作の雰囲気に近く結構よかった。

いやもう原作が好きで何を言っても嘘になりそうなのでちょっと少女終末旅行に関しては何も言う事が出来ません。すまん。

 

キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series (Larche)

皆さんご存知時雨沢恵一原作キノの旅のリメイク。非常に出来が良くお勧めできる作品。

旅人キノが自我を持ち話す二輪車エルメスと共に各地に点在する国を訪れる物語。1話完結式で、原作の出来がそもそも良いので1話1話のクオリティは担保されている。また、原作を読んでオチを知っていても楽しく観ることが出来るような演出が加えられており、実際面白い。

個人的には最終話のBパート以降の持っていき方が大変好きで、今後の展開を期待できる嬉しい演出だった。作画に関しても申し分なく、全編を通して満足できる作品だった。

今期は他に良い作品が多くて若干埋もれているが良作。過去作を観ている人にもお勧めできる作品です。

 

妹さえいればいい (SILVER LINK.)

平坂読原作の日常系ヒューマンドラマ。賛否あるかもしれませんが俺は好きだよ。

ラノベ作家である主人公の羽島伊月が友人と送る日常が描かれている。アクションはほとんどないので、作画もまあ崩壊はしないけど別に良い訳でもないという感じ。

原作中でもよく描かれているというボードゲームの紹介パートが個人的には結構好き。

ストーリー中では創作者のリアルがよく描かれており、等身大の登場人物たちが個々の悩みを抱えながら、その悩みが完璧に解決するという訳でもないが少しずつ前進しているのが解る構成で、かなり感情移入して観ることが出来る。

駄作ではないが誰にでも勧められる良作という訳でもない、人を選ぶが面白い作品だった。

 

干物妹!うまるちゃんR (動画工房)

サンカクヘッド原作の日常系アニメ。うまるん体操踊れへん人間なんかおるんか?

1期同様、観る事に全くストレスの生じない作品。海老名ちゃんと濃厚お尻セックスしてえなあ。

1期を観て趣味に合った人は観ればいいと思いますが、別に1期を観た時に生じた感情以上のものが生まれた訳ではなかったので他に言う事はありません。

 

鬼灯の冷徹第弐期 (スタジオディーン)

江口夏実原作の地獄が舞台の日常(日常って何だ)系アニメ。BGMとして流すのに最適なアニメ。内容があまりないわりにたまに面白い事を言うのでちょうど良い。1期同様そういう感じなので3期があってもたぶん観るんだと思う。

別に人にお勧めできるわけではない。

 

十二大戦 (グラフィニカ)

西尾維新原作の現代異能バトルもの。これ映像化する必要あった?

干支にちなんだ十二家の人間がひとりずつひとつの街に集められ、ひとりの生き残りを決める24時間の死闘を繰り広げるというお話。たぶん原作は面白いんだと思う。

3DCGを先に作ってその上に絵を描く事でレイアウトや高度な動きを実現したアクションシーンが魅力的だが、終盤は作画パワーが尽きて3DCGのまま放り込まれていた。(まあそれは別にいいんだけど)

全体的に西尾維新らしい言葉遣いや表現が散りばめられているんですが、戦闘主体の作品ではあまり映えず(というかお互いの良さを損なっていて)、原作は面白いんだろうけど映像化には向かなかったんだろうなと感じる場面が多かった。

あとキャラデザがとてもダサい。

まあそういう訳で、興味のある人は観たら良いと思います。序盤のアクションに観るべき部分は多いが、別に面白くはない。

 

Fate/Apocrypha (A-1 Pictures)

正直Fate/Apocryphaに関しては序盤と終盤の戦闘シーンと22話(全部)の作画だけ観ればいいと思います。物語の展開に関しては完全に駄作だと思うし、23話で茶番勢以外死んだ段階でもう絶望しか残っていなかった。アストルフォくん早く死なねえかなと思ってたけど案の定終盤まで残ってて無理だった。

22話は全編通して観るべき話だったので作画のオタクは是非観てください。伍柏諭とかBahiさんを初めとした鬼パワーアニメーターの見本市で感動した。

とにかくしんどかった。

 

という訳で全15作完走でした。ちょっと少なかった気もしますし他にも良作があったと思うので、観るべき作品があれば教えてください。

それではみなさん良い2018年を。